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ヴァンデグローブ 大西洋で何かがおきる

1月8日。舵オンラインに記事をアップしました。

勝負の第4幕へ/ヴァンデ・グローブ実況 舵オンライン │ 船遊びの情報サイト
高槻和宏のヴァンデ・グローブ実況(2021/1/8 金曜日配信) ■それぞれのホーン岬 1月2日 13:42(UTC)(日本時間 1/2 22:42)に、先頭のヤニック・ベスタベン(47歳/男性/フランス)の〈Maître CoQ IV〉がホーン岬(Cape Horn)を通過し大西洋へ出る。 以降、続々と続き、...

記事の時点(1/7 21:00UTC)でのポジションがこちら。

ここから勝負の3日間が始まる、なんて書いちゃったので、どうなったかのご報告です。

大西洋はまたしても混沌

こちら、あれから2日後。今朝(1/9 21:00UTC)のポジションです。

片腕のトリプル・ゴールドメダリスト、ダミヤン・セギャン:Damien Seguin(41歳/男性/フランス)の〈GROUPE APICIL〉は僅かに届かず4位のまま。
とはいえ、1/7時点で〈APIVIA〉〈LinkedOut〉の2艇、名付けて “ALコンビ” のあたりに位置していた低気圧は予想通り東に移動。〈GROUPE APICIL〉はそこへ吹き込む南西の風に乗れています。
〈GROUPE APICIL〉はもうすこし岸に寄せてから返すかと思っていたのですが、この南西の風が沖よりに位置するとみたか、 “ALコンビ” に出会う前に返しています。そしてこの状態。

この南西の風。低気圧に吹き込む……というより高気圧から吹き出す風といった方がいいのか。
そこに貿易風から分かれてきた北東の風がぶつかった壁──前線ができています。
これがちょうど、今先頭にいる〈Maître CoQ IV〉の目前にあり。
“ALコンビ” のあたりは風弱く。これ、やっぱりダミヤン・セギャンは知的なコース引いてますね。まあ、みんな同じような気象データを同じようなルーティングアプリに読み込ませてコース引いているんだろうけど。

で、この先24時間後の1/10 21:00UTCの予想がこちら。今の各艇ポジションの上に重ねています。

赤い点線円は、〈GROUPE APICIL〉を先頭とする追走集団の24時間後のだいたいの位置です。
南米大陸沿いにあった高気圧は東に移動し、前方の軽風域は広がる予想ですが、追走集団は南の風の中を走り続けられそうです。

この大西洋北上の復路は、大きな勝負どころです。
なんたって、前回(2016-2017)は、ホーン岬回航時には先頭から約750マイル離されていた2位の〈HUGO BOSS〉が、フィニッシュ間際には僅か35マイルまで差を詰めた、きわめてタクティカルなコースなのですから。

そしてこちら↓はさらに24時間後、1/11 21:00UTCの風向風速予想。

貿易風はかなり弱まると予想されています。こうなると、追走艇団も船足は落ち。それを追うアルメル・トリポン:Armel Tripon(44歳/男性/フランス)の〈L’OCCITANE EN PROVENCE〉とクラリス・クレメール:Clarisse Cremer(30歳/女性/フランス)の〈BANQUE POPULAIRE X〉が差を縮めてきそうなのですが……。

涙のクラリス

そのクラリス・クレメール、南緯50度帯のセーリングでかなり疲弊しているようで……、

Onboard video – Clarisse CREMER | BANQUE POPULAIRE X – 08.01

こちら↑、1月8日にアップされた動画ですが、「この48時間良いこと無し」と愚痴り、泣いてます。

ケープホーンの回航が1月5日で、そこでは元気に映像を送ってきていたクラリスなのですが。

このあとの48時間ということですよね。

ケープホーンを回ったとしても、この動画の時点ではまだ南緯50度台を走っているわけで。風は安定せず、かなりお疲れのご様子。

メインセールのトラックが壊れ……たぶんメインシート・トラベラーのカーだと思われますが。直した直後に45ノットのブローでヘッドセール(J2)を巻き取ろうとしたところ破いてしまい。
特に昨晩は、休めず、眠れず、パニックに陥り。と、ビデオメッセージとして世界に向けて告白。

……と、そこで、訳も無く(本人談)泣いちゃうところがオトメ。
いやいや、泣いて済ませられるところが、男より強いところなのかも。

クラリス・クレメールの紹介は、また改めて。
なんだか他の女性セーラーとはまた違う経歴みたいなんで。

〈MACSF〉リタイア

というところで、ここまで女性でトップの位置にいたイザベル・ヨシュク:Isabelle Joschke(43歳/女性/フランス、ドイツ)の〈MACSF〉がリタイアです。

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1月7日にアップした紹介記事でも、カンティングキールのトラブルについて触れました。

この時点では、油圧のラムの問題で “傾けられなく” なった状態。つまりバラストキールはセンター固定できていたのですが。その後それもできなくなったようで。
これは、カンティングキール艇にとって致命的なトラブルです。これまでも、これで沈んだケースも多々あります。

今のところ浸水はないということで、セールを降ろして様子見のようですが。場所は、ケープホーンを回航したとはいえ南緯45度。沖だしコースをとっていたので、陸地まで1000マイルはある海域です。おまけに、今ちょうど大きな低気圧の北に位置し海象も悪いもよう。

レース続行もなにも、かなりシリアスな状況にあると思われます。
続報を待たれよ。

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