1人乗り無寄港世界一周レース「ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)」はいよいよ今日(2020/11/8)、日本時間の21:02スタートです。
「ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)」とはいったいどういうレースなのか。それを説明する重要な書類は、公式掲示板に掲載されます。
「ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)」の公式掲示板はこちら、
ここに、このレースで適用される数々のルールが掲載されています。
一つ一つ見ていきましょう。
『Notice of Race』(NoR:レース公示)
そのレースは、いつどこで、どんなヨットを使って、どんなコースを走るのか? 参加資格は? なんてことが書かれているのが、レース公示です。
[<notice-of-race-vendee-globe-amendment5.pdf>ダウンロード]
最初に出たのがいつだか良く分かりませんが、2019/4/2に最初のAmendment(訂正)が出て、現在の最新は2020/11/3更新の「Amendment 5 版」。
訂正が出るのはいいとして、どこがどう変わったのかハッキリさせないと大混乱になります。そこで、このようにキッチリ整理されています。
【NoR:6.3】(10ページ)で、このレースで適用されるルールがずらっと並んでいます。
以下、
『Racing Rules of Sailing 2017-2020』(RRS:セーリング競技規則)
『RRS』はヨットレースの基本的なルールで、「World Sailing」(WS:国際セーリング連盟)が管理しているものです。
『RRS』に従って競う競技を「ヨットレース」と呼んでいます。逆にいえば、「ヨットレース」とは『RRS』の元に競う競技のこと。それ以外はヨットを使った単なるヨットイベントということになります。
『RRS』にはカイトボードのように “ヨット” とは呼べないジャンルも含まれるので “セーリング競技” と呼ばれるようになってはいますが。
【RRS:89.1】で、主催団体は、WSかそこに加盟する各国連盟(MNA:a member national authority)、あるいはMNA傘下のヨットクラブであること、等とあります。
それ以外の団体が『RRS』を使って「ヨットレース」を主催すると、主催団体自身が『RRS』に違反する、ということです。
オリンピックの翌年から改訂されるので、『2021-2024』がすでに出ており、ここで『2017-2020』と明記しておくのは重要。
『the International Regulations for the Prevention of Collisions at Sea-Part B』(COLREGS:海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約 B部)
一般船舶にも適用されるもので、日本では『海上衝突予防法』。B部(第4条~第19条)は、操船規則及び航行規則ですね。レースルールだけではなく、一般船舶用のルールも適用される、ということ。
『Offshore Special Regulations』(OSR:外洋特別規定)
外洋ヨットが安全で公平にレースを行えるよう、最低限の設備を共通化するルールです。
これもWSが管理しています。カテゴリー4からテゴリー0まであり、「ヴァンデグローブ」では最も厳しい「カテゴリー0」が適用されるということ。
“amended by the FFVoile” とありますが、FFVoile は「Fédération Française de Voile」(フランスセーリング連盟)のこと。フランスセーリング連盟でローカルルールを適用した『OSR』が適用されるということです。
ローカルルール分は、『レース公示』の巻末「Appendix 2」(34ページ)にあります。
The IMOCA Class Rules
「ヴァンデグローブ」で採用されているヨット、IMOCA60のクラスルールです。
IMOCAは「International Monohull Open Class Association」の略。「イモカ」と読みます。
<IMOCACLASSRULE2021V.1.5-[25918].pdf>
このルールに沿って艇が建造され、勝負は着順勝負となります。
The Equipment Rules of Sailing (ERS:セーリング設備規則)
ヨットの構造に関するルール。船体とは……とかセールの展開のしかたとか、細かい定義はここで。『RRS』後段に載ってます。
上の『IMOCAクラスルール』と重なる部分もあるので、その場合は『IMOCAクラスルール』が優先されるということです。
『SAILING INSTRUCTIONS』(帆走指示書)
ここで、レースのコースやスタートの手順などが細かく規定されています。
『レース公示』と並んで、そのレースがいったいどんなレースなのかを決める重要なルールです。
Amendment #1までの適用版が最新。
[<si-gbr-vendee-globe-2020-including-amendment-1.pdf>ダウンロード]
その後11/6に、Amendment #2が変更点だけ出てます。
レース中の公式時間は国際標準時(UTC)。スタートとフィニッシュは「UTC+1」。
で、スタートは、2020/11/8 13:02(UTC+1)。ということもここに書いてあります。
ということは、日本時間の同日21:02ですね。
また、「APPENDIX 3: PROHIBITED ZONES」のAEZ:Antarctic Exclusion Zoneの数値も、ここに掲載されているのは「V0」で、このあと「V1」が出ています。
ZONE D’EXCLUSION ANTARCTIQUE
そのAEZ:Antarctic Exclusion Zoneの改定版(V1)がこちらに。
このコースは、南極を廻る巨大な島周りのレースのようなものなので、南下するほど(南極に近づくほど)距離は短くななります。しかし海図には載っていない氷山があり、非常に危険なので、氷山を避ける為の帆走禁止のゾーンが設定されています。緯度経度が指示されるだけのバーチャルマークみたいなものですが。
これは観測された氷山の実際の位置から決めているので、今後も変更がでるかもしれません。
MULTIMEDIAS APPENDIX
このイベントがプロのレーサーによる魅せる商業イベントとして成功するためには、メディアへの露出は重要です。しかしレース中のメディアへの露出は、スピードにはマイナスになるわけで。単に “選手側のサービス” でメディア露出していたのでは不公平。ということで、ここでルールとして決まっているようです。
[<multimedias-appendix-vg2020.pdf>をダウンロード]
後でゆっくり読んでおきます。
RURES
このコーナーには、IMOCAのルール改訂部分が載っているようです。
掲示板のタイトルを「IMOCA」にすれば分かりやすいのになぁ。いや、その他のルールについてもここに載るのかも。
中で、Liberty Kiteに関する記載があります。これ面白そう。
マストが折れた場合の推進力に、マスト無しでも使えるカイト型セール。
畳めば小さいだろうし、良いですね。
搭載する場合はパックして、レース中は使えないようにせよ、と書いてあります。あくまでも緊急用。
と、ヨットレースにはルールがやたらといっぱいあるんです。
運営側も、参加艇も、見る方も、たいへんですね。
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