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ヴァンデグローブ 2020-2021 第2幕 赤道を越えて

11月8日にスタートした「ヴァンデグローブ 2020-2021」は、11月18日(1319UTC)先頭を走る〈HUGO BOSS〉が赤道を通過。〈LinkedOut〉〈APIVIA〉〈YES WE CAM!〉が続きます。
この時点では赤道収束帯の活動はさほど活発ではなかったようで、わりとスムーズに第2幕──南大西洋に入ったようです。

追う者達

11月14日。オートパイロットが壊れてのワイルジャイブからメインセール破損に至り、カーボ・ベルデ付近の海上で修理をしていた白石康次郎の〈DMG Mori Global One〉も、11月20日に修理を終え戦列復帰。後続艇団を追います。

ヴァンデ・グローブ開幕から2週間/白石康次郎が戦線復帰へ 舵オンライン │ 船遊びの情報サイト
■1艇リタイア、舞台は南半球へ 単独無寄港世界一周レース「ヴァンデ・グローブ 」は、スタートから2週間が経過。フランスをスタートしてから、サザンオーシャンを目指して大西洋を南下する参加艇の多くが赤道を越え、南半球へと入った。 現在トップに立っているのはトマ・ルイヤンの〈LinkedOut〉。8艇エントリーしている最...

後続艇団は現在10艇。中には、トップにいながらハリヤードトラブルで大きく順位を落とした最新世代艇〈L’OCCITANE EN PROVENCE〉もおり。

後続艇団は今まさに赤道収束帯で苦しんでいるところ。先行艇団が横切ったときと比べ、しっかりと無風帯を形成しており、ここで後続艇団も2つに割れるか。
後を追うコージローにとっては、追いつくチャンスか。

さらに後ろからは、修理を終えて11月17日に再スタートした〈CHARAL〉も追走。
優勝候補の一角を占めていた〈CHARAL〉ですが、スタート2日後にラダーなどを壊しスタート地点のレ・サーブル=ドロンヌに戻って修理していたもので。こちらは完全に修理が終わった最新世代艇なので、みるみる追いついてくるでしょう。
いやー、これは後続艇団の争いも面白そうだ。コージローがいるし。

大西洋のトラブルは

トップで赤道を通過したアレックス・トムソンの〈HUGO BOSS〉ですが、21日には〈LinkedOut〉に先頭の座を譲り渡します。
この時点では、高さの違いもあるので、 “先頭” の意味は曖昧なのですが、〈HUGO BOSS〉は明らかに遅い。何があったのか。

11月21日の夜。アレックスが定例の艇内点検をしていたところ、船首部(内側)のロンジフレーム(縦通材)に異常を見つけ──おそらくヒビか剥離でしょうが──すぐにショアチームに無線連絡。とりあえず減速しショアチームが対策を練っている間、アレックスは6時間睡眠をとる。……って、落ち着いているなぁ。

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記事中、 “slamming” とありますが、
『ヨット、モーターボート用語辞典』(舵社刊)によれば、

スラミング【slamming】
船首が勢いよく水に突っ込んでいくタイミングに合わせて波が盛り上がるときに発生する激しい船首衝撃。通常は、波に向かって走るときに起こる。……以下略

とあります。
あれ? それはパンチングでは? と思うと、

パンチング【panting】
ピッチング(pitching、縦揺れ)と波の衝撃の圧力で船首付近の外板が凹凸を繰り返すこと。(中略)パウンディング(pounding)との用語上の相違に注意。

とあり、じゃあパウンディングは?

パウンディング【pounding】
船首が波に突っ込むときの衝撃。スラミング(slamming)と基本的には同じだが、特に激しくて強度上に問題になるものをスラミングという。……以下略

とあります。
つまり、我々が普通使っている “パンチング” の使い方が間違っているってことですね。
で、改めて、 “slamming” とは我々が普段使っている “パンチング” のすごいやつ、ということ。

通常はアップウインドでのお話ですが、フォイリングする最新世代のIMOCAになると、ダウンウインドでも “激しいパンチング” が起きるということ。
フォイリングすることで、逆に波に叩かれにくくなるとも言われていたのですが、船首(バウ)を高く持ち上げて走っているわけで、いざ波に突っ込むとものすごい衝撃になる、ということでしょう。

フランス艇はレース直前まで各艇補強していたようです。
対して〈HUGO BOSS〉は修理用の資材を十分に積んでいるとのこと。なので24時間で修理できるだろうとのこと。
食料は67日分しか積んでないのに、修理用の資材はたんまり搭載しているってところがまた、スゴイ。で、他艇は補強工事をしているのに、それはしなかった、と。壊れたら直すからいいもんね、と。
ギリギリの軽量化というのはそういうことか。

ファニーな南大西洋

赤道収束帯はすんなり通過した先頭集団ですが、南大西洋の風はかなりファニーなようで。

南大西洋における中緯度高気圧「セントヘレナ高気圧」はあるのですが、西に小さな低気圧があって高気圧を分断。南へ抜ける北風の回廊(corridor)は狭く、弱く、不安定。だから、ファニー、と。

修理の為に艇速を落とし穏やかな海面が欲しい〈HUGO BOSS〉にとっては好条件ともいえます。なにより、荒れる第3幕「南氷洋」に入る前に気づいたことも。

今先頭を航く、〈LinkedOut〉のトマ・ルヤンもスペアハリヤードを壊し、一人でマストに登って直したとのこと。各艇苦労しているのです。

苦労する話ばかりではナンなので。
こちら、「ヴァンデグローブ 2012-2013」に〈initiatives cœur〉で出場し10位の Tanguy De Lamotte。

Vendée Globe :Smoke on the water de Deep Purple pour Tanguy de Lamotte

20艇がスタートし、11艇がフィニッシュ。で、10位ってことはビリから2番目。といっても98日で走りきってますから。これはやっぱりすごいです。で、エア・ギターですから。
賞賛されるべき、お馬鹿です。
で、完走することがどれだけ大変なのか、完走するだけでどれだけ偉大か、ということでもあります。

ちなみに、セーフティーハーネス(のテザー)をギター代わりにしてますが、ライフジャケットは付いてないんですね。いや、確かに、1人乗りの南氷洋で、落水したらライジャケ着てても意味無いもんな。

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