ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)参加艇紹介。
〈Seaexplorer – Yacht Club de Monaco〉 Boris Herrmann (39♂独)
ボリス・ハーマン(Boris Herrmann)は39歳のドイツ人。ドイツ人初のヴァンデグローブ出場なんだそうな。
フラッグはドイツになっていますが、スイスに本拠地を置く国際輸送会社、キューネ・アンド・ナーゲル(Kuehne & Nagel)と、艇名にもあるようにモナコのヨットクラブ(the Yacht Club de Monaco)がスポンサーになっていて、とりわけモナコ色が強いもよう。
モナコ公国御用
モナコ公国という名前は良く聞くけれど、いったいどういう国なのか、ヨーロッパの謎のひとつといえますね。少なくとも僕にとって。
で、どうやらボリス・ハーマンの古くからの友人でありモナコ・ヨットクラブの副会長であるピエール・カシラギ(Pierre Casiraghi)が、モナコのプリンス・アルベール(Prince Albert)の甥。ということは王族か。王族をお友達に持つということか。
いやいやちょっと待ってくださいよ。モナコ公国とあるから王家というより公爵家で、公式サイトの説明ではPrince Albertとあるけれどアルベール2世が正しく、現在の当主。で、ピエール・カシラギはアルベール2世の姉の息子。ということは、おばあちゃんがあのグレース妃。父親はイタリアの実業家でモーターボート選手のステファノ・カシラギという人で。日本でモーターボート選手というと、競艇選手を思い浮かべてしまいますが、こちらはもっとなんというか富豪っぽい感じみたいですよ。
で、父ステファノ・カシラギはモーターボート事故で亡くなり、その後ハノーハー家の方と再婚……ということでドイツ系と繋がるのか。
なんだかもうおとぎ話のような関係ですが、とにかく海をからめた慈善事業を行っているようで、今回のレース出場でも南氷洋での海水温、塩分、ペーハー、二酸化炭素などの調査研究をするんですと。
って、別にボリス・ハーマンが高貴なお方というわけではないですよ。高貴なお方とお友達ってこと。まあ、ボリス・ハーマンもなにげに育ちがよさそうな雰囲気を醸し出してますけど。
艇も名艇
そんなモナコ公家のお眼鏡にかなうだけあって、ボリス・ハーマンの戦歴もなかなかです。
公式サイトの記述は→こちら
バンデグローブこそ初出場ではありますが、特に、2016年に、
Third best time in the Jules Verne Trophy aboard Idec Sport
とありますが、2016-2017に「the Jules Verne Trophy」を獲得した〈Idec Sport〉は40日23時間の記録を打ち立てているはず。それに乗っていたというのは、なかなかです。
こちらヴァンデグローブで乗る〈Seaexplorer – Yacht Club de Monaco〉は、2016年進水のVerdier – VPLPデザインで、第8世代IMOCAということになります。
バリバリの新艇として臨んだ前回(2016-2017)は〈Edmond de Rothschild〉としてセバスチャン・ジョセ(Sébastien Josse)が乗り3位に着けていたものの、オーストラリアの沖でUFOと衝突。フォイルの取付部を壊してリタイヤしてます。
今回の出場に向けて、フォイルも新しいデザインにするなど改造を施しているようで、7月の前哨戦「Vendée-Arctique レース」ではずっとトップ争いをしており、戦力としては十分評価されます。王家に伝わる名刀という感じ。最後にセールのトラブルで順位を落とし、それでも7位。って感じでした。
艇よし、人よし。で、この原稿を書いている時点では6位につけてます。
艇上の雰囲気は……なんか余裕ありありなんですけど。