「第36回アメリカズカップ」の挑戦艇を決める「プラダカップ」(PRADA CUP)が始まりました。
1月16日-1月18日
1月22日-1月24日
の2終末に総当たりのラウンドロビンが行われます。
まずは最初の終末。日本セーリング連盟(JSAF)の外洋系ホームページ『on Breeze』に記事をアップしました。
こちらにも、そのまま転載しときます。今後の話の繋がりもあるので。
「プラダカップ」ラウンドロビン始まる 〈AMERICAN MAGIC〉転覆
「第36回 アメリカズカップ」(3/6-3/21:オークランド、ニュージーランド開催)の挑戦艇を決める「プラダカップ」のラウンドロビン(総当たり戦)が始まりました。
公式webページは→こちら
総当たりといっても、挑戦チームは米、英、伊の3チームだけ。
1日2レースが行われますが、となると、どこか1チームだけが1日2レースやらなきゃならないということになります。
■ 初日:1/15(金)
快晴 8-15ノットという絶好のコンディションの中、英国の〈INEOS TEAM UK〉が2レース行い、2レースとも完全勝利。
防衛艇のニュージーランド〈EMIRATES TEAM NEW ZEALAND〉も加えて4チームで開催された12月の「プラダ・アメリカズカップ・ワールドシリーズ」では、 “1弱” とも評価された英国チームでしたが、見違えるような走りで、いったい何が変わったのか?
レース後、解説のケン・リードが「フォイルの形状が変わったんじゃ無い?」と、英国チーム代表でスキッパーのベン・エンズリーに質問すると、「リグもセールもラダーもエレベーターもフォイルもそれらのコントロールシステムも……全部変えた」とぶっきらぼうに答えています。
まあ、ここでその秘訣をしゃべる訳ないですね。
■ 2日目:1/16(土)
風が非常に弱く、フォイル艇にとってはギリギリの開催条件。
この日は、米国の〈NEW YORK YACHT CLUB AMERICAN MAGIC〉が2レースなんですが……。どちらもスタートから全く冴えず。2敗を喫します。
どうしちゃったんだ、アメリカン。
■ 3日目:1/17(日)
ラウンドロビン3日めは、昨日と打って変わって12ノットから20ノットの強風に加えて雨というサバイバルコンディション。
こんな日に 2レースやらなきゃならないイタリア〈LUNA ROSSA PRADA PIRELLI TEAM〉は不運です。
それも、1レース目(英国戦)は途中で風が大きくシフトしレースは中止……というかやり直しに。イタリアがリードしてたのに。おまけに、やり直しの英国戦では負けてしまいます。
これで英国は4戦全勝。
続く2レース目、というかイタリアチームにとってはこの日3レース目といってもいいのですが。疲れが出たか、スタートは良かったものの、みごとなリーバウタックを決めた米国チームに抜き去られ。おまけにコースをはみ出てペナルティーも食らい。米国が圧倒的にリード。
これで英国4勝、米、伊共に1勝3敗か……と思われた〈AMERICAN MAGIC〉ですが、最後の上マーク回航直後に大きく宙に舞ったかと思うとそのまま横倒しに。
解説のネイサン・アウタリッジは「セーフティーにベアウエイして右のマークを回航すれば良かったのに」と言ってますが、〈AMERICAN MAGIC〉はタックして左のマークを回り、そのままベアウエイしようとしたところシモ(左舷)のランナーが出ず、メインセールがひっかかったか……とケン・リード。
すぐに、各チームからもチェイスボートがかけつけ、乗員に怪我はありませんでしたが、船体左舷側に大きな穴があいており、艇を起こしたところで大量に浸水。沈没寸前でした。
四角い穴なので、左舷側のフォイルを上げ下げする駆動装置が船内側に抜け落ちたか。
ランナーが出なかったというより、ポート側のフォイル駆動装置がふっとんで、そのまま左に倒れたのか。
浮き上がったときに、左舷のフォイルが後ろに傾いているように見えるのですが……。
艇の修理には10日はかかるとのことで、1/22、1/23、1/24に予定されている残りのラインドロビンは欠席。
ラウンドロビンで最下位(3位)となっても、続くセミファイナル(1/29-2/2)には出られます。
ここで、ラウンドロビンで2位になったチームを下せばいいわけで。
とはいえ、かなり大きな損傷のようなので、原因究明も含めてここから10日はチームは大わらわです。
何があったのか
翌1月18日。〈AMERICAN MAGIC〉のスキッパーでExecutive Directorでもある、Terry Hutchinsonが記者会見を行いました。
なんでまた沈したのか。原因と解決策。修理の進捗。と、レガッタは始まったばかりで、これらを全部さらけだす必要はないわけで。でも転覆 “事故” なんで、チーム外からもコーストガード(ニュージーランドにコーストガードってあったっけ?)消防、警察、チームニュージーランドまで出てきて救助作業に加わっています。ほんと、沈む寸前でしたから。バラストキールのある艇だったら沈んでいたかも。
で、爽やかなアメリカンなTerry Hutchinsonは真摯に質問に答えていますが、どうもうまくごまかしているような感じ。
冒頭、いくつものミステーク(lots of mistake)と言いかけて、「lots of things」と言い直しているように聞こえますし。
この日は単に風が強いだけではなく吹いたり落ちたり、差が激しかったようで、事故のときもマーク回航直後に3秒間で風速が18ノットから23ノットに上がっていた、と。これが一番の原因といったら原因か。
で、やっぱりシモ・ランナー出ていなくてってのもあるようですが、そのあたりはなにやら言い訳がましい感じです。なにもここでホントの事を言う義務はないですから。ゲームはまだつづいているわけで。
問題は、何でベアウエイ・ジャイブにしなかったのか。
これがレース中の無線で、メインセールトリマーのPaul Goodison(英国のオリンピック金メダリスト)が、「ベアウエイ・ジャイブの方がスマートだと思うぞ。タック・ベアウエイはかなりハードだぞ」と言っているのを聞かずDean Barkerが強引にタックさせてるところが流れちゃっているようで。
十分なリードを保って迎えた最後の風上マークで。ここはセーフティーにベアウエイ・ジャイブの方が良い、、というのは解説のネイサン・アウタリッジもライブで解説しています。
Terry Hutchinsonは会見で、左マークの方が有利だったからと言ってます。最初の上マークもタック・ベアウエイで回ったしって、なんか言い訳がましいんですが。
タクティシャンのTerry Hutchinsonはグラインダーも回しており、その間周りが見えてるのか、と生中継でも指摘されていましたが。無線でAndrew Campbell(フライトコントローラー)やDean Barkerと常にコミュニケーションがとれているから問題ない、と答えています。おっと、ここにPaul Goodisonの名前が出てきてませんねぇ。
Paul Goodisonの声を無線で聞いて、「よっしゃベアウエイか」とクルーが思っているところでヘルムスマンのDean Barker舵を切ってしまったら……。ここの一瞬の判断が、タック後のシモ・ランナーのリリースを遅らせてしまったのかも。
いずれにしても、修理はかなり大変そうで、電子機器もすべてパーみたいですが、これはスペアがあるようで、セミファイナルには間に合いそうです。
前回の「第35回 アメリカズカップ」では、チーム・ニュージーランドの〈Aotearoa〉がやはりキャプサイズ。でも、最後は勝ってカップをニュージーランドに持ち帰っています。
なんて、会見の最後に司会者から声をかけられ、ほっとした表情のTerry Hutchinson。
これも、アメリカズカップです。
カンファレンスの後か前か、解説のケン・リードと。アメリカンな二人ですが、久々に話す感じですねぇ。
ケン・リードも、昨年暮れのアメリカズカップ・ワールドシリーズ以来ずっとニュージーランドにいるようで。この日焼けは毎日ゴルフやってるもよう。
アメリカ大統領選も気になってそうですが……。
追伸:————–01/19 18:56
こちら、『Yachting World』の記事で文字になっているのですが。それでも意味が良くわかりません。
あと、Paul Goodisonの進言「ベアウエイ・ジャイブにしよう」というのを聞かずにタックしたDean Barkerが悪い、、みたいな書き方になってしまいましたが。逆に、直前になってメインセールトリマーが口を出すから混乱したんじゃない? という見方もあるかと。
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