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【VG2020】〈APIVIA〉Charlie Dalin

ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)参加艇紹介。
前哨戦として7月に行われた「Vendée-Arctique レース」では、みごと2位に入ったのがこちら、Charlie Dalin(36歳♂仏)。

© Jean-Marie Liot / Alea / Disobey / Apivia, © Vincent Curutchet / Alea / Disobey / Apivia

今回が「ヴァンデグローブ」初出場のCharlie Dalin。先にご紹介した〈LinkedOut〉のThomas Ruyant同様、Mini6.5をはじめとしてショートハンドの外洋畑を歩んできた人ですが、紹介記事でアピールされているのは「Sailor but also architect」つまり、ヨット・デザイナーでもあるということ。

Verdier設計、2019年8月5日進水の、そのヨットは、、、

第1世代

第1回「ヴァンデグローブ 1989-1990」の優勝艇〈Ecureuil d’Aquitaine II〉のタイムは109日8時間。
第2回「1992-1993」はスタート直後の荒天で引き返す艇も多く、優勝艇の記録も110日2時間と記録更新はならず。

ただ、このあたりから外洋レーサーに革新的な変化が出始め、1994年の「BOC Challenge」(1人乗り寄港型世界一周レース)に初のカンティングキール艇〈Ecureuil Poitou-Charentes 2〉が出場しています。

カンティングキールとは、バラストキールを風上側に傾けて(canting)バランスを取るしくみで。重いバラストを傾けるシステムがなかなか難しく、スピードは上がりますがリスクも高いものです。

〈Ecureuil Poitou-Charentes 2〉も第1レグでは優勝したものの、第2レグで沈没しています。

第3回「ヴァンデグローブ1996-1997」では、Pete Goss(英)のカンティングキール艇「Aqua Quorum」が126日21時間で完走。優勝艇〈Geodis〉は105日20時間ですから、まだまだカンティングキールの有利さは出てません。同時に出場していた〈Budapest〉もカンティングキールみたいですが、テークルで駆動するタイプ。で、こちらはリタイヤ。

まだまだ、カンティングキールはリスクが大きく、主流にはなれず、の時代です。

第2世代はカンティング

これが、第4回「ヴァンデグローブ 2000-2001」では優勝の Michel Desjoyeaux〈PRB〉が93日3時間.。2位のEllen MacArthur〈Kingfisher〉が94日4時間と一気に10日以上短縮。どうやら、ここからカンティングキール+ダガーボードの第2世代と言ってよろしいかと。

+ダガーボードというところが強みで。このあたりは別にまとめます。

以降、
第5回「2004-2005」、87日10時間。
第6回「2008-2009」、84日3時間。
第7回「2012-2013」、78日2時間と、確実に記録は塗り替えられ、80日を切りました。

ここまで年々改良が加えられてはいるのでしょうが、カンティングキール+ダガーボードの第2世代とまとめてしまってよろしいかと。

そして前回の第8回「2016-2017」でフォイル艇が出現。これが第3世代
優勝のArmel Le Cléac’h〈Banque Populaire VIII §〉は74日3時間と、これまでの記録をさらに4日短縮しました。

で、今年も主流はフォイル艇。それもかなり大きくなって、第3.5世代と勘定してもいいのか。
Charlie Dalinの〈APIVIA〉はまさしく第3.5世代のヨットです。

第2世代の艇を改造して3.5世代のフォイルを設けた艇も出てきており、走りの差が見物です。

3.5世代のコクピット

© Jean-Marie Liot / Alea / Disobey / Apivia

さてフォイルの話、走りの差は、スタートしてからのお楽しみとして。ここでは解りやすいコクピット形状について。
1人乗りで外洋を突っ走るIMOCA60のコクピットは、フルクルーのVolvo Open 70と違って、屋根で被われています。
で、さらにこちら、Charlie Dalinの〈APIVIA〉は、コクピット後端も完全に窓で被われているもよう。

© Jean-Marie Liot / Alea / Disobey / Apivia

出入りは横のドアから? なんかよけい波が打ち込みそうですが。
何より屋根の高さが低いですね。


一方こちら、前にご紹介したThomas Ruyantの〈LinkedOut〉は、やはり3.5世代の新艇ですが、コクピット形状は第3世代なつくりです。

屋根には被われていますが、後部は空いていて、ドジャー(透明ビニールの幕)を閉めるタイプ。
それにしても、フルクルー仕様のVolvo Open 70とは大きく異なっています。
「ヴァンデグローブ」ではキャビンの中というか、屋根の下で過ごす時間が長い……というか、ほとんどを屋根の下で過ごすもよう。

© Vincent Curutchet / Alea / Disobey / Apivia

〈APIVIA〉の出っ張った窓から外をチェックするCharlie Dalin。写真右手が船体後部となります。
天井にも窓がついていて、メインセールのチェックとトリムも船内からできるんでしょう。
この後レースが始まったら、このての動画がいっぱい出てきそうなので、今回はこれで。

保険はAPIVA

Charlie Dalinは英語読みだと “チャーリー” なんでしょうが、フランス人なので、 “シャーリ” か。 “Dalin”は?
と読みが微妙でカタカナにするのが難しいので、ここは〈APIVIA〉と艇名をアルファベットのままでいきましょう。

スポンサーのAPIVIAは保険会社です。MACIFグループの一つ。MACIFは他にも外洋セーリングのスポンサーになっており、今回もIsabelle Joschhke(43歳♀仏/独)が〈MACIF〉で出てます。

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